食品添加物と食中毒の関係とは
「無添加」を信頼される方が多いと思いますが、その無添加とは何が無添加なのか考えたことはありますか?
現在販売されている加工食品のうち、添加物を使用していないものを探すのは難しいと、正しい食品表示ラベルの作り方|添加物その1でもお話ししましたが、食品添加物には「食中毒を抑える」役割を果たすものが多数あります。
まず食中毒とは、ざっくり言うと食品のなかで細菌やウィルスが増殖することで起こります。
食品は無菌だと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的に食品が有害無害問わず、無菌であることはほぼ皆無だと思ってください。
細菌やウィルスは空中にも舞っていますし、様々な器具類を経由して作られる加工食品には使用した器具類から付着することがあります。
食中毒を防ぐには、「つけない、ふやさない、やっつける」の三原則があります。
すなわち、まずは細菌やウィルスを付着させないこと、どうしても避けきれないものは増殖する環境や時間を与えないことが原則です。
この増殖する環境を与えないためには、急速冷却などの加工過程での対応に加えて「食品添加物」が利用されることがあります。
例えば、保存料の静菌作用、pH調整剤のpH調整能力は、細菌やウィルスの増殖を抑えるのがその役割です。
また、勘違いしては良くないのですが、よく「大手メーカーの市販のパンがカビないのは添加物のおかげ」で「自宅で作ったパンは無添加だからすぐにカビがはえる」とされることがありますが、これは全て添加物のおかげではありません。
大規模工場では、空気中の細菌やウィルスを可能な限り除去したクリーンルームで製造され、そのまま包装されます。そうすると、空中に浮遊しているカビの元になる細菌が完成したパンに付着しないので、カビが生えにくいのです。
一方で家庭で作ったパンは、クリーンルームではありませんし、器具や手指の洗浄殺菌も未熟です。また、焼きあがったパンはそのまま放冷されますので、その間に空気中のカビの元になる細菌が付着します。
そうするとどちらがカビが生えやすいかに、必ずしも添加物の関係性がすくないことがわかります。
なぜ、添加物を入れるのか
皆さんは、パンやお土産にするお菓子を買うとき「冷蔵品」と「常温品」のどちらを選びますか?
持ち運びや日持ちを考えて「常温品」を選ぶ方が多いと思います。
この常温が、一番厄介なのです。
というのも食中毒菌が活発に活動するのは低めの常温からもう少し高い温度帯です。
また、様々な種類から選ぶパンやお菓子などは、乾燥したものよりも、ふわふわしっとりやクリームが入った、ちょっと生っぽいものが好まれますよね。
これらは水分の量が多いため、食中毒菌が非常に活動しやすい環境になります。
企業にとって「食中毒」とはお客様の生命に関わることですので、一番のリスクです。
したがって企業は皆様に安全な食品を提供するため、添加物が利用されている一面もあります。
また、これらの課題を解決するため、日々研究が進んでいます。
一昔前ではこれらの課題解決のために保存料や食品添加物が多用されていました。
しかし、今では最低限必要な添加物だけで、包装資材や水分量コントロールでこの課題をクリアしています。
また、色や香りなど美味しそうに見えないと、消費者は見向きもしてくれません。
ゼロコンマ何秒の世界で消費者は買うか買わないかを判断しています。
そこで、発色剤や香料を入れて消費者の皆さんに満足していただけるように製品づくりを行なっています。
もちろん廃棄物を再生するような添加物や、悪意のある添加物の使用は控えるべきだと思います。
しかし、消費者が求める非常に高いレベルに、各企業は必死の研究努力をしていることも片隅でいいので覚えておいていただきたいと思います。
ハム類の亜硝酸塩
添加物のもう一つの側面の例として、ハム類には必ずと言っていいほど「発色剤(亜硝酸塩)」などが入っています。
これは製造の工程で肉を塩漬けするときに利用され、発色を良くするために入れているのはもちろんですが、実はこの亜硝酸塩はボツリヌス菌に対して大きな効果を持っています。
食中毒の講習を受けたことがある方なら、からし蓮根の食中毒事故をご存知の方も多いと思います。この原因菌がボツリヌス菌でした。
ボツリヌス菌は自然界に広く存在しますので、いつどのような形で付着するかはわかりません。
亜硝酸塩を含んだ塩漬けにすることで、発色だけでなく食中毒のリスクも低減しています。
塩漬けは古来から有効な保存方法ですが、昔の人はボツリヌス菌を知らない時代から利用してきたことはすごいですね。