最近よく見聞きする、賞味期限の表示方法を年月日から年月に変えるというニュースについて、食品表示に詳しい方なら、「あれ?それって本当に廃棄を防ぐことになるの?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
食品の賞味期間表示 「年月日」→「年月」 廃棄防ぎ物流効率化も 変更の動き じわり 小売り 製造業
食品の賞味期間の表示を「年月日」から「年月」に変更する動きが、メーカーや小売りで広がっている。まだ食べられる食品を廃棄する「食品ロス」が社会問題となる中、食用が可能な範囲で期間に幅を持たせ、無用な廃棄や安売りを減らす狙いだ。現在は調味料などの加工食品や飲料品が中心。物流や在庫管理の効率化にもつながる。追随する企業が増えてきそうだ。https://www.agrinews.co.jp/p42319.html
日本農業新聞 10月29日
賞味期限表示のキホン
まず、賞味期限の基本をおさらいしておくと、表示の基本ルールは「平成29年10月29日」のように年月日まで表示するのが基本です。ただし、その期限が3ヶ月を超える場合は「平成29年10月」と、年月で表示することもできます。
しかし、「平成29年10月」と表示できるのは、年月日で表示したときに「賞味期限:平成29年10月31日」から「賞味期限:平成29年11月30日」までの間になるもので、それより前の期限のものには表示できません。
すなわち、「賞味期限:平成29年10月29日」のものを年月で表示する場合は「賞味期限:平成29年9月」と表示しなければならないのです。
- 平成29年10月29日の賞味期限のもの
- 月末に達していないので、「賞味期限:平成29年10月」の表示はできない
- 年月で表示したい
- 10月29日よりも前の「賞味期限:平成29年9月」と表示する
つまり、賞味期限を年月日から年月に表示を変更すると最大1ヶ月短くなることがあります。
商習慣と管理上の問題が大きい
廃棄や流通の非効率はなぜ起こるのか、その理由の一つに「先に仕入れたものよりも短くなる賞味期限のものは仕入れない」流通販売の商習慣があります。
例えば、
(1)賞味期限:平成30年10月1日
(2)賞味期限:平成30年10月29日
の二つのお菓子があったとします。この二つは年月日で表示すると賞味期限が違いますので、通常は(1)を先に仕入れて販売し、続いて(2)を仕入れます。これが先入先出の管理方法で一般的に使われている手法です。
しかし、同じチェーングループで(2)を仕入れたA店の在庫がなくなり、B店から融通してもらおうとしたとき、B店の在庫商品の賞味期限が(1)の場合、賞味期限が1年以上あっても規定上融通してもらえません。
お客様の立場に立って考えてみても、A店で購入したお客様は、今日買った商品が「賞味期限:平成30年10月29日」なのに、明日買うと「賞味期限:平成30年10月1日」のものを買うことになり、クレームにつながるかもしれません。
加えて、先入先出の管理上も非常にややこしくなります。
こうなると、あまりこの商品に人気のないB店ではA店に融通することもできず在庫を抱え、期限の日付が迫ると廃棄せざるを得なくなります。
表示方式を変えることで、効率を良くする
では、なぜ表示方式を変えると賞味期限は短くなるのに、廃棄を防ぐことや物流の効率化ができるのか。
それは、この商品の賞味期限を年月で表示する方法に変えると、
(1)賞味期限:平成29年9月
(2)賞味期限:平成29年9月
になることが大きなポイントです。
このように変更すると、A店もB店も同じ賞味期限の商品を扱っているので、上記のように1日でも短いと融通できなかった商品が、互いに融通できるようになります。
結果、B店の在庫はよく売れるA店に持っていくことで販売され、A店で買い物をするお客様はおなじ賞味期限の商品を購入できるようになります。
また、先入先出の管理上も同じ賞味期限ですのでやりやすくなります。
これが、賞味期限の表示を年月日から年月に変えたことによる効果の一つです。
他にも取り組みがある
この他にも、廃棄を防いだり物流の効率化には様々な取り組みがされています。
これまで、賞味期限を伸ばすため「保存料」などの食品添加物を入れることもありましたが、今は健康志向の高まりと企業も美味しく安全性の高い商品を提供したいという思いもあり、今では使われることが減ってきています。
その代わりに、
・包装資材を変える
・衛生管理方法を変える
・高度な製造方法に変える
など、様々な努力がされています。
機会がありましたら、これらについても記事にしたいと思います。